3/10・アガサ誕生日記念SS
(またフライングだけどね!)
──なんだか、エリンが僕を警戒している…?
理由はよくわからないながらも察しているが、彼女への感心を向けていないと"見せる"様に、アガサは椅子に腰を掛けて本を読みはじめた。
ふうとため息が聞こえ、足音が遠退いていく。
アガサはエリンに何をしたのかは全く身に覚えがないが、否定はできないけれど"そう"とは言い切れない。
そんな心境を抱えても何も変わらないし、彼女の様子を見ていたいけど、今のエリンは"見られる"のが一番嫌らしいので、アガサはひたすらに読書を続けていた。
「きゃっ! 殻が入ってる! どうやって取るの…? やだ、あっち焦げてる!どうしよう……!?」
「あ、もしかして」
──料理しているのかな?
エリンの苦手分野なのに何故…?
しかし、今日は誰かをマイルームへ呼んだ記憶は無い。
「そうだ…僕の誕生日だ!」
たった今思い出した。
苦手なのに一生懸命、自分の為に料理を振る舞ってくれるだなんて、なんて愛らしいんだろう。
思わず口角を上げて、ベッドへ飛び込む。
ポニーテールにエプロン姿で苦戦し、自分に甘えだしたエリンを妄想しながら、ゆっくりと眠りについていくのであった。
──しばらくして。
「アガサ。ねぇ? アガサってばぁ~!」
「はーい!なんでしゅかぁ~?!」
額に何かが弾けとんだ。
そのおかげで夢と現実の境目がはっきりわかった。
エリンの中指と親指の距離が短い。
額に飛んだのは彼女のデコピンだったようだ。
「……ごめんなさい」
「もう。寝ぼけすぎ! それより、早く起きて」
「え?」
きょとんとした顔のまま、エリンに手を引かれる。
絆創膏だらけの手から、さっきの料理への努力がどれ程のものだったか、一目で想像ついた。
「ほら!見て見てっ」
「え?!…す、凄い…!」
テーブルの上に、白地に花柄のティーセットに囲まれたワンホールのケーキ。
ケーキにはイチゴの輪の中に本物の花が敷き詰められていて、鮮やかな紫色を帯びている。
「とても綺麗だよ! このケーキの花、本物のパンジーだよね?」
「うふふっ。それはエディブル・フラワーって言って、食べられる花なの。風の精霊さんから教えて貰ったのよ」
「へぇ……初めて知ったよ!」
食べるのが勿体ない。今日1日だけ大切にしていたい気持ちだけど、ありがたく頂こう。
「ほら、座って?エリン」
「ちょっ…ちょっと!主役が気を使っちゃダメっ!」
「いいから、いいから」
「……むぅ」
アガサはエリンを先に椅子へ座らせて、紅茶を注ぐ。
するとエリンがシュガーポットを取り出し、砂糖に包まれた花を紅茶に浮かばせてくれた。
「誕生日おめでとう、アガサ。これからもよろしくね!」
花がぱっと開いた様な笑顔を目前に、ご馳走になったケーキとお茶で過ごした一時は、アガサにとって特別なものとなった。
【END】
お久しぶりの更新です。
またフライングでお祝いしてしまった。
けど、1ヶ月くらい忘れてた去年よりは良いよね?と(笑)
あの時は本物にごめんね、アガサ。
今年は忘れずにやりたかったので無事にできて良かった。
改めて、アガサ誕生日おめでとう。
ゲームでも創作でもエリンのためにいっぱい活躍できますように!
ゲーム公式がアナウンスしていた?YOMEのステータス上昇がとても楽しみです。
【6/25:追記】
追記・修正をいくつか行いました。
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