リアスとアズリーと『あの子』と




──公国の酒場前にて。



ヌンキ(女版リアス)
『ふぅ〜今日も看板娘を任されちゃった♡またお客さんから差し入れ貰えたし、だーい満足♡ 女の子になれる最大のメリットだよね〜、へへっ』

????
「リアスッ!」

ヌンキ
「ん?」

????
「なにぼやっとしてるの、早く助けなさい!」

ヌンキ
「オレの頭に直接話してくる…? これができるのは……アズリーちゃんだよね、どこ!?」

アズリー
「貴方のすぐ後ろ!早く!」

ヌンキ
「……? あっ!!」


アズリー
「変な男に連れてかれそうになってるの!助けて!!」

ヌンキ
「ちょっと、そこの人!」

「え?……僕??」

ヌンキ
「他に誰がいるのよ!その子は……」

アズリー
「ママーッ、助けて!アズリーお家に帰りたーい!!」


通行人達
「「!!??」」(ざわっ……)


「え?ええっ?!さっき君、自分で迷子だって言ってたじゃない!」

ヌンキ
「(よし、このまま押し切ろう……!)アズリーは私の娘よ、返しなさい!?」

「どうしよう……」


エリン
「あら、リアスくんとアガサ。こんなとこでなにしているの?」

ヌンキ
「は???」

アガサ
「あ、エリン。このアズリーって子が迷子になったって言ってたけど、なんでか僕が人さらいになったんだ……どうすればいい?」


通行人A
「え?どっちかが勘違いしてたってことか?」

通行人B
「話が糸くずみたいにこんがらがってんのか?誘拐じゃないならまだいいか……」


エリン
「あの、お騒がせして大変申し訳ありません……私の知人達がいろいろと誤解してたそうなので、私から状況を確かめ整理いたしますので」


通行人A
「あ、いやいや大丈夫ですよ!」

通行人B
「よくあることなんで、気にしてません〜無事に事が落ち着くと良いですね!」


エリン
「もう。公国は活気が多い分、よく他の冒険者が利用してる街なんだから、変に騒がないで?特に酒場前でやったら危ないのよ」

アガサ
「ごめんね、エリン……ごめんなさい」

アズリー
「エリンさんと言ったわね?このアガサさん……?が、私が迷子になったからって、いきなり他のとこに連れてかれそうになったのよ?どういうこと?道を伺いたかっただけなのに!」

エリン
「不安な気持ちにさせたかな……ごめんなさいね。
私はその場にいなかったからわからないけれど、私とアガサは冒険者で必要な時にだけ国の市場を利用するばかりで、他はあまり利用してないのと、国そのものに詳しいわけじゃないの。
だからアガサは国のことに詳しい情報があるお城へ向かおうとしたんだと思うの」

アガサ
「お城にはナギさん達がいるからね。僕達にいつでも相談にのって頂けるから、君の目的地へたどり着けるかもしれないと思ってね」

アズリー
「え?そうだったの……ごめんなさいね」

エリン
「世間は色んな事があるから、無理もないわ。でもリアスくんにしてはアガサに敵対するなんて珍しいのね……いつもなら鼻めがねみたいなふざけたアクセでも気にしないでフレンドリーにしてるのにね」

リアス(ヌンキから戻った)
「だってさ、いつも連邦の青いのを着てるのに今日は着物みたいな格好してるじゃん! なにその、着物だけど錬金道具が飾ってあるやつ……」


アガサ
「スチームパンク風の着物が珍しくて買ったから、これを着て新年の挨拶に周ってたんだよ。その途中でこの迷子の女の子(アズリー)と会ったんだ」

リアス
「ふーん、そう……別の服に着替えちゃってたらわかんなかったよ……ごめん」

アガサ
「いいよいいよ。気にしないでね」

エリン
「ところでリアスくん、この子の助けに入ったってことは知ってる子なのよね? だったら話が早いわ。この子からして見ず知らずの私達より、知り合いのリアスくんの方が安心するかもしれないし、案内して貰った方が良いと思うの」

リアス
「ああ、だいじょーぶ!オレもこの子と話したいことあるしね」

エリン
「お願いね。そうだ、この子の名前……何ちゃんだったかな。お姉さん、お名前は?」

アズリー
「アズリーよ」

エリン
「アズリーちゃん……素敵なお名前なのね」

アズリー
「ふんっ。……まぁね」

エリン
(あれ?照れてるのかな……)

リアス
「んじゃ、オレこの子と行ってくるよ〜」

エリン
「よろしくねー!」

アガサ
「アズリーちゃん……またいつでも遊びに来てね!」

アズリー
「……どうも」



──…
───…


裏道にて。



リアス
「さてアズリーちゃん。ゼノルヴィ様からの命令を破ってまで、エリン達に近づいたのはなんでなのかなー?」

アズリー
「ただの人間になりすまして、食料を調達したかった……それだけよ。なに?」

リアス
「それはオレだけが補うって契約だったでしょ。嘘つかないで」

アズリー
「他に何かやましい理由があるとでも?」

リアス
「ムキになるのが怪しいなぁ〜? まあ実害を与えるのが目的じゃないのなら、深追いはしないよ。でもあの事件はエリン達には知らない方が良いからね。君が、もとい君達が関わってはならないのを忘れないで欲しいかな」

アズリー
「言うわね?忘れてなんか無いわよ。私はゼノルヴィ様に忠誠を誓った"牙"。アンタみたいなポンコツじゃないんだから」

リアス
「そりゃ結構。ほら、お迎えのサリィとイタッチ達がこっちに来てるオレの頭に直接言ってきた……気をつけて魔王国に帰るんだよ」

アズリー
「余計なお世話!」
(リアス……あんたじゃ、わからないでしょうね。私はただ──あの子に会いたかった。それだけなのに)



──…
───…



──公国の桜の下。



シルビア
「エリンさん、今の騒ぎはどうだったんですか?」

エリン
「あっ。シルビアちゃん!お買い物を途中でほっぽり出してごめんね、今落ち着いたとこなの」

アガサ
「僕から事情を話すよ……実は斯々然々で──」


シルビア
「なるほど迷子の女の子が、アガサさんが誘拐をしてくると勘違いしたんですね! きっとアガサさんが流涎するほどの可愛い女の子だったんでしょうね……!(ごくり)」

※シルビアは可愛い女の子が好物だぞ!

アガサ
「話をすり替えるの辞めて???」

シルビア
「どんな女の子なんだろう……ちなみにその子の名前は?」

エリン
「名前はアズリーちゃんよ」

シルビア
「アズリー?聞いたこと無い名前ですね。一度お会いしてみたいです〜。アガサさんが惹かれるくらいの子だそうですしね!」

アガサ
「だから惹かれてないってば、もう〜!」



※本作に登場したモブ(通行人達)は実際のゲームでのマルチモードにいらっしゃる方々とは一切関係はありませんので、ご了承ください。

悠然画帖 -ユウゼン ガチョウ-

管理人:柚月 真桜 「好きなものを好きな時に描く」をモットーにブログ運営中。 PCが無いのでAndroid版メディバンペイントを愛用。お絵描きのお供はいつも好きな飲み物とお菓子で。